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事業計画を作成する(Part.5)

■事業計画を作る上でのポイント

 

 事業計画のなかでも、特に数字の計画を作成するうえで注意したい点があります。

 

 先ほども説明した通り、例えば売上高の目標を示したところで、その数字の裏付けとなる計画がなければ、目標は絵に描いた餅となってしまいます。数字の根拠となる計画も併せて説明をしていく必要があります。

 

 その「売上計画」を達成するためには、どんな「人員計画」を立てているのか、さらにどんな「投資計画」を立てているのか、といった根拠が必要です。

 

 

 上記三点が事業計画を作るうえで最低限必要な項目ですが、それに加えて、計画が違和感のないものになっていないかどうか、現状分析をする必要があります。また、成長のボトルネックとなっている事項など、事業計画を遂行するうえでの課題も記載しておくと信頼性が高まります。

 

 各項目のポイントは以下の通りです。

 

【売上計画】
□過度に楽観的となっていないか?
・過去の成長率と比較して、過度に楽観的となっていないか検証
・ベースケース、アップサイドケース、ストレスケース等、複数のシナリオを用意し、検討していることが望まれる

 

□マーケット環境を踏まえて計画しているか?
・市場成長率や市場予測等のデータと比較して違和感のない計画となっているか、またマーケット占有率が実現可能な計画となっているか等を検証

 

□サービス/商品群/事業別等、積み上げ根拠があるか?
・複数のサービスや商品群を扱っている場合、それぞれの売上計画を、根拠を持って説明できることが望まれる
・新規サービスを事業計画に織り込む場合には、 前提条件を詳細に明記することが望まれる

 

【人員計画】
□売上計画を達成できる要員が計画されているか?
・売上計画を達成するために必要となる人員の過不足を検証
(業務量から要員数を決める⇔適正人件費から要員数を決める)
・内製化と外注(業務委託)の比率も重要な要素

 

□マーケット環境を踏まえて採用を計画しているか?
・過去の採用実績を踏まえ違和感のない計画となっているかを検証
・必要とされる採用コストも損益計画に含まれているかを検証

 

□各職種に必要なスキル要件が明確になっているか?
・売上計画のシナリオ別に必要となる人員の職種、その職種に必要なスキル・要件が明確になっており、採用可能かどうかを検証

 

【出店(投資)計画】
□売上計画を達成できる投資計画となっているか?
・売上計画を達成するために必要となる設備投資計画、IT投資(システム開発)計画、出店計画となっているかを検証
・減価償却費の計画と整合しているかを検証

 

□DCF法による評価をする際の必要要素
・投資計画はDCF法で企業価値を評価する際に必須の項目
・必要な資金が確保できるかの検証も必要

 

【現状分析と課題】
□粗利率や営業利益率が実現可能な水準か?
・損益計画における利益率を過去の実績や同業他社と比較し検証
・コスト構造(売上原価や販管費)の内容を検証

 

□成長のボトルネックとなる事項を把握しているか?
・成長のボトルネックとなるのが、人員なのか、資金なのか、販売価格なのか、競合の動向なのか、技術力なのか等、要因を分析

 

□変動費と固定費を明確に区別できているか?
・売上計画のシナリオ別に売上原価や経費(販管費)が適切に計画されているかを検証(売上の増減に連動してかかる変動費とそれ以外の固定費を区別できているか)

 

 

 いかがでしたか? 創業当初は社長(ビジネスオーナー)の感覚で経営していた会社もEXITを想定すると途端にやるべきことが増えるはずです。

 

 これらの要点をしっかり押さえて経営すれば売れる会社になりますし、いつまでも後回しにして業績ばかりを追っていれば買い手が見つからず売れない会社になってしまいます。

 

 当然、自己資金、社長の人脈だけで会社が長期的に発展するわけもなく、いずれ競争力で負け始めて業績悪化や業績停滞に陥り、会社はより売れない会社へと向かっていくことになるでしょう。

 

 あなたの会社ですから、M&Aで売却するも継続するも自分次第です。しかし、将来、何が起こるかは誰にも予測できません。健康上の理由などで働き続けるのが困難な状況になってしまうことも無いとは言えません。

 

 だからこそ、社長を続けるにしても、いつでもM&Aができる状態に早い段階でしておくことが経営者の勤めだと思うのです。

 

 クライアント、取引先、働く社員からすれば、「経営者が誰か」よりも安定した成長、安定したサービス提供、安定した環境をより高確率で提供出来る会社にしてほしいと思っているはずです。

 

 何度も言いますが、M&Aのナレッジは会社を売る際の終わりの一手ではありません。会社に関わるすべての人がWin-Winになるための成長戦略として、まだEXITについては考えていない経営者も理解し、検討しておくべき事項なのです。

 

 EXITを想定していない経営はピットインが存在しないレースみたいなものです。周りの会社はピットインを得て、タイヤを履き替えたり、ガソリンを補充したりして長距離でも戦える状態を作っています。一方、あなたの会社だけがピットインのない耐久レースに臨んでいるとしたらどうでしょうか。

 

 今は勝てていてもいずれは必ず負けが来る、わかりきったレースを続けているようなものです。ぜひ当コラムをきっかけにEXIT戦略についてよく考えて見て頂けると幸いです。