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事業計画を作成する(Part.2)

■買い手は売り手の何を分析する?

 

M&Aで買い手が知り得る情報は大きく開けて三つ。①客観的かつ事実に基づいた情報である「財務諸表データ」、②売り手経営者自身の分析である「IM(案件概要書)」、そして③第三者評価である「DDレポート」です。

 

 

そして、買い手が知りたい知りたい情報は主に以下の7点です。

  1. 将来、いくらのフリーキャッシュフローを生むビジネスか?
  2. いくらの(追加の)資金を投入する必要があるのか?
  3. 将来の成長可能性
  4. 上手く行かないとしたら、どのような事が起きた時か?
  5. 買い手とのシナジー効果で期待できること
  6. (上場企業)業績に与えるインパクトは?
  7. (ファンド)投資回収期間は?

これらを頭に入れたうえで、買い手目線で事業計画を立てるようにしてください。

 

■事業計画の参考事例 Airbnb

 

事業計画の策定において非常に参考になる事例の一つが、Airbnbのピッチデック(投資家向けプレゼン資料)です。

Airbnbは2020年に米NASDAQに上場した民泊サービスの会社。同社が立ち上げたばかりの2008年に作成した、ピッチデックがインターネット上でも公開されています。「Airbnb Pitch Deck」で検索すると見つかるはずですので、ぜひ見てみてください。

 

 

同社はこの事業計画で6,000万円ほどの調達をしたのを皮切りに、次々と調達しながら事業成長を成し遂げ、数年で1兆円企業になりました。このピッチデックにどのようなことが書かれていたのか、簡単に説明します。

 

 

●表紙(サービスを一言でいうと……)
表紙には「Book rooms with locals, rather than hotels.」とキャッチコピーが書かれています。「ホテルよりも地元民の部屋を予約しよう」という意味で、一言で同社のビジネスをイメージできる内容となっています。

 

●課題
宿泊業界の抱える課題を三つ「価格」「ホテル」「仕組み」に絞って提示し、それぞれ短い説明を加えています。

 

●ソリューション
課題に対して同社が提供する「ソリューション(解決策)」を以下の三つに絞って表現しています。

・旅行者がお金を節約できる。
・ホストはお金を稼げる。
・地元と都会を結びつけ、文化をシェアできる。

 

●市場の検証
競合サービスがどれくらいのユーザーを抱えているか、データを示しています。

 

●市場規模
同社サービスが展開する市場の規模について、TAM・SAM・SOMで示しています。

・TAM(Total Addressable Market):実現可能な最大の市場規模
・SAM(Serviceable Available Market):TAMのなかで顧客としてアプローチできるターゲット層のこと
・SOM(Serviceable Obtainable Market):自社が実際に獲得できる市場のこと
この三つの市場規模で説明することで、自社が今後獲得しようとしている市場の大きさをわかりやすく伝えることができます。

 

●製品
同社サービスの使い方を画像と説明文だけで端的に説明しています。「都市を検索する」「リストを確認する」「予約する」を3ステップだけで示すシンプルな構成です。

 

●ビジネスモデル
同社サービスでユーザーが使う平均金額、そこからAirbnbが得る手数料、それらの結果得られる売上高の3点を、数字で簡潔に表現しています。ここを見るだけでどのような利益構造になっているかが把握できます。

 

●市場への適合戦略
これから実施しようとしているイベントや、パートナーとの連携など、マーケティング施策を説明しています。

 

●競合
市場におけるポジショニング、競合優位性について、それぞれ1ページで図とともに説明しています。

 

競合優位性のページでは、「市場でNo.1である」「貸し主にとってインセンティブになるビジネスである」「簡単な登録だけで済む」「デザインが優れている」などの点が列記されています。

 

●チーム
創業メンバーのプロフィールを説明しています。

 

●報道
メディアで報道された事例を記載しています。

 

●ユーザーの声
ユーザーからの感想、評価を記載しています。

 

ここまでわずか13ページです。内容は薄いかもしれませんが、圧倒的に説得力があり、ビジネスの可能性を感じさせる資料です。

 

このピッチデックは、同社が創業したてで実績がまだあまりなかった頃の資料です。したがって内容は、「これからどういうビジネスを展開し、どんな課題を解決していくのか」にフォーカスされています。

 

実績ある企業の場合は、これからの可能性よりも、これまでの実績にフォーカスするのがいいかと思います。

 

続く