事業計画を作成する(Part.1)
■事業計画を作成する目的
事業計画を作成する目的は大きく三つに分けられます。「経営戦略の指標」「資金調達目的」「経営改善・再生」です。さらにこの三つのなかでも、いろいろな目的に分かれています。
事業計画は、その目的に合わせて作り分ける必要があります。例えば、融資を受けるために銀行に提出する事業計画と、会社を売却するために買い手に見せる事業計画では作り方が異なるはずです。
また、M&Aの買い手向けの事業計画書も、買い手によって説明の仕方を変える必要があります。その業界やビジネスモデルに詳しい企業もあれば、詳しくない企業もあるからです。詳しくない企業に対しては、細かく丁寧に説明する必要があります。
●M&A時に開示する事業計画書
M&A(売却)の際に必要となる事業計画では、主に次のような項目を記載します。
【M&A時に開示する事業計画書の項目例】
・会社概要・沿革
・業績サマリー
・ビジネスモデル
・組織図、マネジメントメンバー
・他社との差別化戦略
・業界分析
・市場予測
・3カ年計画
・今後とまとめ
順番や内容についてはさまざまなパターンが考えられ、正解はありません。事業計画と聞いて一般的にイメージされるものは損益計画かもしれませんが、その数字の根拠となる業界分析や市場予測、数字を達成するための組織図や人員計画も、買い手には説明する必要があるということです。
損益計画だけがあっても、その損益計画を達成するためにどういう戦略があり、どんなKPI(重要な経営指標)を追いかけていくのか、そのKPIを達成するためにどういう行動をするのか、アクションプランがなければ損益計画は絵に描いた餅になります。
■持続的な成長が期待できる組織へ
中小企業オーナーが会社を売却しようと考えた時、買い手候補から指摘されやすい課題は次の要素です。
「売上・利益が継続・維持できない」:
模倣されやすい、特定の取引先への依存度が高い、業績が不安定など
「組織として未成熟」:
キーマンへの依存度が高い、社長の影響力が高い、管理職が育っていないなど
「ビジネスリスクや税務リスクが高い」:
業界の先行きが不透明、価格競争が激化、適正な業績把握が困難など
では売上・利益が継続・維持でき、社長がいなくても回る会社になるためにはどんなことが必要なのか。持続的な成長が期待できる組織になるまでには、下記の図のように三つのステップがあります。
●ステップ1
ほとんどの会社はこのステップ1の段階にいます。現状把握ができていないということです。
現状を正確に把握するためには、年1回税理士に作らせた決算書を確認するだけでは不十分です。できれば毎月、少なくとも四半期に1回、決算書を確認して対策を検討できる組織にすべきでしょう。
さらに、KPIを明確に設定すること。そして従業員との会話の中でもKPIベースで話ができるようになると、組織として一つステージが上がります。
●ステップ2
従業員と一緒に話し合い、合意をとりながら、明確な目標を立て、それに対する施策を検証できるようになっているのがこのステップです。
計画は、会社全体の売上目標や利益目標を立てるだけでは不十分で、事業単位ごと、あるいは責任者ごとの売上目標などを明確にし、従業員と数値を共有して始めて意味があるものになります。
●ステップ3
次のステップでは、策定した計画に対して実績がどうだったか、振り返りをして原因を分析します。それも社長ではなくマネージャーが自ら分析して、自分たちでアクションプランを考えられるようになる。そこまでできると、持続的な成長が期待できる組織といえると思います。
続く