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どうすれば、あなたの会社を高く売れるのか?(Part.3)

■【交渉術】Point.4 自社とシナジー効果のある相手を選ぶ

 

 次に売却する相手ですが、自社とシナジー効果のある相手を選ぶとよいでしょう。

 

 シナジー効果を簡単にいえば、「1+1」の答えが2ではなく3にも4にもなるような関係のことです。お互いの強みが相互に作用しあって、より価値が高まる可能性がある相手であれば、シナジー効果が発揮されます。

 

 買い手企業が「この会社を買ったらシナジー効果が発揮される」と判断すれば、相場よりも高い価格を提示してくることもあります。
 具体的にシナジー効果につながるパターンを四つほど例示しました。

 

●コスト削減、スケールメリット
 例えば、同じエリア内に複数の調剤薬局の店舗がある時、大きな薬局グループが小さい薬局を買収して、エリア内の自社グループ店舗を増やすことで、いろいろな面でコストメリットが高まります。

 

 取り扱う医薬品の数が増えて仕入れ量が増えることで、仕入先に対して価格交渉力が高まるほか、物流効率化による物流費の削減、人材の融通による人件費の削減なども期待できるからです。

 

●得意先の拡大
 自社の商品にマッチした優良な得意先を売り手企業が抱えている場合には、買い手は大きなシナジーがあると考えます。相場より多少高くても買ってくれることもあります。

 

●時間の節約
 大手企業が新規事業を立ち上げたいと考えた時、ゼロからスタートすることもありますが、そこから事業化して安定的に利益を出せるようになるまでには時間がかかります。そこで時間を節約するために、すでにある程度の実績・ノウハウ、あるいは許認可・ライセンスを持っている会社を買おうと考えるのです。

 

 時間は貴重な資源の一つであり、コストでもあります。M&Aによって時間を短縮できることは、買い手にとって大きなメリットでありシナジーです。

 

●ノウハウ・ナレッジ共有
 売り手の持つノウハウやナレッジを自社に取り入れ、自社のリソースと組み合わせることで、大きなシナジー効果が生まれることもあります。

 

 例えば、ある特殊な技術を持つ会社があったとします。大手食品メーカーが持つ装置にその技術を使うことで、生産性の向上や商品の品質向上などの効果が期待できるのなら、大手食品メーカーにとっては大きなシナジーといえます。

 

 売上実績はなくても、ノウハウや技術に着目してもらえれば、高く売れる可能性はあります。「このノウハウや技術をより高く買ってくれる会社はどこだろう」といった視点で買い手を探すことが大切です。

 

■買い手属性別の重視するポイント

 

 さてここで、買い手企業の属性別のニーズについて説明します。
買い手の属性は、投資会社・ファンド、上場企業、オーナー企業の三つに分かれます。

 

 このうち一番高く買ってくれることが多いのはファンドや投資会社でしょう。次に高く買ってくれるのは上場会社です。

 

 オーナー系の非上場企業は、上場会社と比べると出せるお金も限られるので、売却価格は少し劣るという印象があります。あくまで取引事例の一般論であって、業界などによっては例外もあります。

 

 それぞれにメリット・デメリットがあり、彼らが何を重視しているのかを理解しておくことは売却を検討するうえで重要です。

 

●投資会社・ファンドが重視すること
 投資会社やファンドには運用方針があり、投資に対するリターンに非常にこだわります。したがって、買収対象会社も利益重視です。利益が出ている会社、成長著しい会社は投資ファンドに持ち込むと高く売れる可能性があります。

 

●上場企業が重視すること
 上場企業が買収する目的には、大きく分けて二つのパターンがあります。一つは既存事業を伸ばすため、もう一つは新規事業を獲得するためです。

 

「既存事業を伸ばす」とは、シェア拡大のために同業他社を買収するということ。そのようなニーズのある買い手企業には、ロールアップをしてある程度の規模感になることで高く買ってもらえます。

 

 新規事業の獲得を目的とする場合には、売り手の企業規模はあまり関係ありません。上場企業が自社に取り入れることで、新たな事業の柱となったり、あるいは既存事業とのシナジー効果が発揮されたりするような、商品・サービス、技術・ノウハウを持っていることを売り手に求めます。

 

 上場企業のM&A担当者にとって、買収価格の少しくらいの差は気にするような問題ではありません。彼らが気にすることは、社内の意思決定機関(取締役会や投資委員会など)を納得させられるかどうかです。したがって売り手がその数字や説得力のある資料等を用意してくれれば、多少高くても買います。

 

 一方、上場企業が非常に厳しくチェックする部分はコンプライアンスです。いくら業績が良くてもコンプライアンスに問題があるだけで、検討のテーブルに載らないこともあります。

 

●オーナー会社が重視すること
 非上場のオーナー会社の場合も上場会社と同様に、新規事業を獲得するために買う、あるいは自社に足りない経営資源を補完するために買うことが多いです。

 

 オーナー会社は、買収対象を検討するにあたって、経営者の人となりをじっくりと把握しようとする傾向が強いように思います。

 

 どんな経営方針で、従業員に対してどういう態度で接しているのか、学生時代に何をやっていたのか、どういう性格なのか……などの細かい点をトップ面談で質問してくることがよくあります。
それは、「買収=一緒に組む」という感覚を持っているからです。

 

 オーナー会社に売るメリットは、コンプライアンス意識が多少低くても、あるいは経理処理がちょっとずさんでも、事細かに指摘され評価に反映されることは少ない点です。

 

 また非上場会社の場合、PLインパクトよりも税金インパクトを重視します。つまり、節税効果をアピールすると高く売れることがあります。

 

 オーナー会社では、オーナーの一存ですべてが決まるので、決断が早いというメリットもあります。なかなか売れなかった案件をオーナー会社に持ち込んだら、パッと決まるということがあります。

 

 

続く