どうすれば、あなたの会社を高く売れるのか?(Part.2)
■【事前準備】Point2.信頼される事業計画書の作成
高く売るために、事前準備の段階でやっておいた方がいいことの一つが、事業計画を作ることです。
●成長過程にある企業は、実現性ある利益計画を
次の図の左にあるグラフのように、過去3年間、右肩上がりで利益が出ている成長企業があるとします。このグラフを見る限り、次の3年も同じように成長する可能性が高そうと判断できます。
しかし買い手としては、その予測を数字で示してもらわないと評価ができません。そのため、成長可能性の根拠を数字で示す必要があります。
どれくらい投資して、どれくらい人を雇い、それにより主要なKPIを達成して、その結果として売上・利益はこのように伸びる……というように、根拠をロジカルに積み上げた計画を示すことです。
上場会社も定期的に業績予想を公表します。そして投資家はそれを見て投資の可否を判断します。M&Aの売り手企業も同様に、投資の可否を判断するための材料を、投資家である買い手に提供してあげる必要があるわけです。
成長過程にあり、大きな成長が見込める会社であればなおさら、事業計画をきちんと作成するべきです。
●成熟企業は好業績が3年間続いた時に売る
一方で成熟状態の会社が右肩上がりの成長計画を立てても、買い手は信憑性が低いと考えます。そこで買い手は、成熟企業に対しては過去3年分の利益の平均値などで企業評価します。
業績好調が3年間続いた絶好調の時に売った方が良いのはこのためでもあります。
■【事前準備】Point.3 ロールアップ戦略
すでに説明しましたが、小規模事業者の多く存在する業界において、同じ業種の会社を数多く買収して市場のシェアを拡大し、バリューアップをさせてから売却する戦略をロールアップ戦略と呼びます。
例えば社員が4、5人、経理のパートさんが1人という会社が売りに出されても、小規模すぎて買い手はなかなか手を出せません。
しかし、そのような会社を10社集めれば、社員は40、50人になり、ある程度の業界のシェアを獲得できます。お互いの取引先を紹介し合うことで売上アップもできますし、取り扱う商品ラインナップを増やすことにもつながるはずです。
また、専門性の高い人材を経理担当として雇って、効率的な経理処理を行うなどすれば、経営の合理化を図れます。この結果、売上が上がるだけでなく、利益率を高めることにもつながります。
このようにして大手企業が好む状態に持っていくことも、会社を売るうえでは重要なポイントの一つなのです。
●ロールアップの手法にもいろいろ
ロールアップ戦略にもいくつかのパターンがあります。自社にキャッシュが潤沢にあるのなら、キャッシュでどんどん買収していくのもいいでしょう。
キャッシュがない場合には、株式交換を使うのも一つの手です。お互いの会社の株式を交換するという取り引きです。
例えばあなたの会社とA社があったとします。あなたの株式をA社株主に割り当て、その代わりにA社の株式を譲ってもらうことで、自社の傘下(100%子会社)にA社を加えることができます。
株式交換を駆使することで、キャッシュアウトを伴わずに子会社を手に入れられます。A社株主に自社の株式を持ってもらうことは、グループの業績向上に貢献しようというインセンティブにもつながります。
ロールアップした会社を100%子会社にするのではなく、自社と合併して一つの会社になる方法もあります。
合併に当たっては、各社の企業価値に応じて比率を決めて、その比率に応じてお互いの株主に株を割り当てます。
例えば同業者のオーナー社長に、「一緒になって企業価値を高め、○年後に売却しませんか?」と声をかけてみるのはどうでしょうか。業績悪化や後継者の不在で困っているオーナー、そろそろ引退を考えているオーナーにとっては、魅力的なオファーに思えるはずです。
続く