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M&Aの契約に関する書類あれこれ(Part.3)

■交渉フェーズのベストシナリオ

 

 売り手にとってどのように交渉フェーズを進めることがベストシナリオなのか、一例を図にしてみました。

 

 まず、①簡易株価算定を売り手側で行います。3期分の決算書を確認して、「年平均利益の5倍」といった形でひとまず暫定の売買価格を算出します。

 

 そのうえで、さらに上の価格を狙うために、正常収益力分析などの②詳細分析を行います。例えば、買収後に不要になる経費を精査すると、実際にはもっと利益を上げられることがわかり、売却価格アップを想定できます。

 

 また、業界動向や取引先リストなど財務情報以外で自社の強みとなっていることを分析して、それを踏まえていくらが妥当かというストーリーを作っていきます。

 

 そして、希望売却額にその根拠となる分析結果や情報を記載した案件概要書(IM)を作成します。

 

 この案件概要書を使って、M&Aアドバイザーが買収意欲のある会社にヒアリングして回ります。この時、打診先が少なすぎると良い条件を引き出せません。できるだけ幅広く・多くの企業をロングリスト(買い手先候補のリスト)に載せて、打診してもらう必要があります。

 

 次に③候補先選定です。強い関心を示した10社ほどに買い手候補を絞り、各社とトップ面談します。そして買い手候補に対して、「当社は将来、これくらい成長する可能性がある」「御社と組んだらこういうシナジーが生まれそう」といった話をします。そして合意に至りそうな会社を絞り込んでいきます。

 

 トップ面談の結果、印象の良かった5社とは継続的に交渉し、期限を設けて④意向表明の提出を求めます。3社以上から意向表明を入手できることが理想です。3社の順番待ちがあれば、売り手としては強気で交渉できます。

 

 意向表明書を受け取った買い手企業のなかから、売り手にとって最も条件の良い相手を選んで⑤基本合意書を締結します。その後、DDへと進みます。

 

 DDの準備を万全にしておけば、ほぼ指摘ゼロで基本合意に記載された金額のまま、⑥最終契約締結に至ります

 

 これが売り手にとっての理想的なシナリオです。

 

 最初の価格設定が高すぎると買い手が行列をなすような状況にはならないので、まずはマーケットバリューや同業社の売却事例等を把握したうえで、適正な価格設定をする必要があります。

 

 魅力的な案件に魅力的な価格を設定できれば、買い手候補が殺到する案件になるはずです。