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DDに備えて準備すべき資料(Part.2)

■最低限準備すべきこと

 

 以上のように、DDの際に準備すべき書類はたくさんあり、やり始めたら切りがないというのが実際のところです。

 

 そこで、最低限これだけは押さえておきたいというポイントを10個挙げました。

 

 

1. 労務関係の各種届け出
 企業規模を問わず引っかかりやすいのが労務関係、特に届け出書関係です。ルールを知らず、あるいは忘れていて届け出せずに、そのまま放置されているケースがよくあります。後々問題になる可能性もあるので、ルールを今一度確認して遵守してください。

 

2. 主要取引先との取引契約書
 主要な取引先との契約が、契約書ベースではなく口頭ベースになっていることも多いと思います。

 

 しかし契約書がないことは買い手からすると大きなリスクです。例えば海外の会社との取引でも、何らかの契約書を取り交わしておいた方がいいです。契約書がないことがネックで会社を売却できないケースはよくあります。

 

3. 公私の区別(銀行口座、経費、給与等)
 中小・零細企業のM&Aにおいて一番指摘されやすいのがオーナーの公私混同です。

 

 特に、個人事業主から法人成りして個人名義の銀行口座をそのまま使っているとか、私的な支出を経費に計上している、オーナーの親族に給料を支払っている、などです。

 

 私的な費用をどこまで計上するかは、程度の問題です。社会通念上、許されないと思われる費用を計上していれば、買い手の不信感につながります。

 

4. 株式売却に関する全株主の同意
 株主が複数人いて、売却時に揉めるケースはよくあります。「株主間協定」を取り交わす、あるいは事前に議決権の委任状をもらっておく(もしくはその双方の対策をしておく)と、揉めずに売却できます。

 

5. 株主の権利証明
 DD時には、設立時からの株主移転に関するすべての書類が求められます。もし今見当たらない場合には、専門家に相談して書類を準備してください。

 

6. 労働者との契約、未払債務の不存在の確認
 従業員との間でトラブルにならないよう労働契約を結び、定期的に認識に相違がないことを確認する手続きを行うと良いでしょう。

 

7. チェンジオブコントロール条項の確認
 主要な取引先との契約にこの条項が入っていると、売却のボトルネックになることがあります。まずは契約書を確認してください。

 

8. 適正な税務申告
 簿外債務がある、あるいは税務申告等で正しい処理をしていない会社を売却した場合に、後から問題が発覚して損害賠償請求されることもあります。普段から適正な税務申告を心がけましょう。

 

9. ガバナンス(横領等が起こり得ない体制)
 従業員が増えてくると社長の目が行き届かなくなります。性善説で考えて従業員を信頼していても、裏切られてしまい、横領などが発生するケースはよくあります。

 

 そもそも粉飾決算や横領などが起こり得ない体制を構築する必要があります。組織規模が急拡大する前からガバナンスに対する対策を講じるとよいでしょう。

 

10.事業に関係のない投資契約等の解消
 本業とは関係のない財テクをやりたがる経営者は多いです。その結果、財産を溶かしてしまったり、売却時に問題になったりします。

 

 財テクが買い手企業に評価されることはありません。会社を第三者に引き継いでもらうことを検討するなら余計な財テクはしない方が賢明です。

 

 財テクをするよりも本業にフォーカスして、本業で儲かる会社にしてから売却しましょう。それが結局は、より多くの財産を作ることにつながります。

 

いかがでしょうか? 買い手が見るポイントはわかりましたでしょうか?

 

 オーナー企業としては当たり前のことでも、引き継ぐ側、つまり買い手側は、将来の利益の数年分に相当する額を投資するわけですから、当然、慎重に調査する内容ではないでしょうか。

 

 ほとんどの中小企業経営者は会社売却の経験がありません。一方で買い手となる大手企業はM&A実務に慣れ、何度もDDを実施した経験のある会計事務所等に依頼します。

 

 そのため、中小企業のM&A実務においては、DDの過程でさまざまな問題、不備が発見され、オーナーは致し方なく減額を受け入れることが多いように思います。

 

 しかし、M&AにおいてどのようなDDが行われるかの知識があれば、小規模の段階から違った経営の仕方を取れた方も多いはずです。本コラムをお読みのあなたは、ぜひ事前に知識を身に着けた上で会社経営を行っていただきたいと願っております。