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買い手は何を調査するのか?(Part.1)

■デューデリジェンスの意義

 

 DDには以下の4つの意義があると考えられます。

 

 リスク判断とリターン分析に基づき、買収価額や契約条件を精査し、買収後を見据えて戦略を策定することにDDの意義があります。

 

 

■ディール・ブレイクとは?

 

 買い手企業は買収を進めるにあたり、重大な障害(ディール・キラー、ディール・ブレイク・イシュー)の有無を把握します。

 

 そして重大な障害が発見された場合、その事実のみで買収をしない意思決定を行うことがあります。重大な障害を発見した時点で他のデューデリジェンスを一時中止・終了することもあります。

 

 私が経験したディール・ブレイクの例を紹介していきましょう。

 

◆重大な障害とは?

 

 

●法令違反
 法令違反、コンプライアンス上の問題などは重大な障害となります。

 

 例えば、ソフトウェアをたくさん使用している会社でありがちなのが、「保有ライセンスを超える台数のパソコンにインストールしている」といったケースです。

 

 従業員などがその事情をBSA(ソフトウェアの権利保護活動を展開している機関)に通報し、違反が発覚すると多額の賠償金が発生します。過去にライセンス違反を起こしている会社やライセンス管理がずさんな会社は、M&Aにおいても避けられる可能性があります。

 

 労働問題もよくありがちです。すでに退職した社員から不当解雇や残業代未払いで訴訟を起こされているなどの問題が未解決のままだと、買い手は「労務管理がきちんとできてない会社だ」「他にも出てくるかもしれない」と心配になり、買収を取りやめることがあります。

 

 また、取引先を調査した時に反社会的勢力や反市場勢力とつながりがあり、経営陣にもそのような懸念を抱かせる事象が発覚した場合には、買い手は理由を言わずにディールを取りやめることが多いです。

 

 なお反社会的勢力や反市場勢力とのつながりは、日本証券業協会が持つ「反社情報照会システム」に照会するなどして調査が行われます。

 

●簿外債務の可能性
 帳簿に載っていない大きな債務があるケースも重大なリスクと判断されます。

 

 例えば店舗ビジネスを運営し、会員向けにポイントを配布するような会社がありますが、そのポイント残高や期限がきちんと把握できていないケースがこれに当たります。

 

●事業の継続性
 事業の運営をキーマンに依存していると、そのキーマンが抜けることで事業が成り立たなくなることがあります。また、主要な取引先との間で明確な契約がない場合、買収後にその取引先との関係が切れてしまうリスクがあり、事業の継続性にリスクがあると判断されます。

 

 例えば、中国から安く商品を仕入れて日本で販売するECサイト運営企業があるとします。この会社は主要な仕入先との間で明確な契約を取り交わさず、社長の個人的なつながりで取引を行っています。

 

 このような会社を買収しても、社長が抜けた途端、仕入れが継続できなくなり、ビジネスが成立しなくなるリスクがあります。買い手としては事業の継続性に不安を抱くため、買いづらいといえます。

 

 仕入値が多少高くなったとしても、きちんとした会社と、きちんとした契約書を取り交わしたうえで取引をすることが大切です。第三者にバトンタッチしやすい環境をつくることが、EXITの成功につながります。

 

●粉飾決算
 経理がずさんだったり、公私混同の激しい経費の使い方をしていたりすると、いくら儲かっているのか実態が把握できません。DDでそのような状況が発覚すると、かなりディスカウントされた買収価格を提示される可能性があるでしょう。社長の経営姿勢に疑問を感じさせるほどの粉飾であれば、ディール・ブレイクになることもあります。

 

 プライベートカンパニーならば公私混同も問題ないのかもしれません。しかしEXITを考えるのであれば、会社の財産と個人の財産は明確に区別する必要があります。

 

 続く