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デューデリジェンスとは?(Part.2)

■デューデリジェンスが行なわれるタイミング

 

 M&Aのプロセスのなかで買い手によるDDが行われるのは交渉フェーズです。具体的には、トップ面談を終えて買い手から意向表明が提出され、基本合意書を締結した後にDDが実施されます。

 

 交渉フェーズ以前の段階でも、さまざまなかたちで売り手の情報は買い手に提供されています。

 

 準備フェーズのノンネームシートやIM(案件概要書)の提出に始まり、交渉フェーズでのトップ面談による情報提供まで、その都度売り手から買い手に情報を渡しています。しかし、それらの情報はあくまでも売り手の自己申告に基づくものであり、買い手にとって正確な情報かどうかは判断できません。

 

 買い手としては、これまでに受け取ったIMなどの情報が本当に正しいのか、DDの段階で改めて確認する必要があります。

 

●DDの前には基本合意契約を結ぶ理由
 DDの前には基本合意書を締結します。その大きな目的は、独占交渉権を買い手に与えることです。

 

 もし、外部の専門家に依頼してDDを進めているのに、売り手が「他社がもっといい条件を出してきたから他社と交渉する」などと心変わりしてしまうと、買い手は専門家へ支払った報酬を損してしまいます。

 

 そういった問題を発生させないためにも、「買い手だけが独占的に交渉権できる」と約束する基本合意書が必要なのです。

 
 
 基本合意書の期限は2~3カ月が多く、売り手企業の規模によっては半年などと長期になることもあります。この期限内に間に合うように、買い手はDDを実施します。

 

●DD後の流れ
 さて、DDの結果、IMや決算書の内容に虚偽がなく、リスクも許容できるということになれば、そのまま最終条件の調整、そして本契約に進みます。

 

 しかし実際には、何らかの問題やリスクが判明するケースがほとんどです。例えば、「社長や役員など特定の人材がいないと会社が回らない」というリスクです。

 

 そのようなリスクが判明した場合、買い手は、その人材がM&A終了後も何年間か働くことを契約条件に加えることがあります。そのような条件を「キーマン条項」あるいは「ロックアップ」と呼びます。

 

 また、税務上のリスクがありそうな場合は、「買収前の決算で税務調査が入って追徴課税が発生した場合には売り手が全額負担すること」などの条項が契約書の中に盛り込まれることになります。

 

 DDはあくまで買い手の判断で実施されるものですですから、どこまで詳細に調査するかは、リスクと投資額を勘案して買い手が検討します。

 

「買収対象企業の規模が小さく、リスクが隠れているとしても大きくはない」と判断されれば簡易的なDDになりますし、「リスクが隠れている可能性が高く、お金をかけても入念に調査する必要がある」と判断されれば詳細なDDが行われます。

 

 そしてDDの結果は、譲渡価格や契約書に反映されます。DDを経て買収の意向を撤回する(ディール・ブレイクとなる)ケースも珍しくありません。

 

■デューデリジェンスの手順

 

 デューデリジェンスの手順としては大きく4ステップがあります。

 

●ステップ1 資料依頼
 すでに提出したIM(案件概要書)にある程度のことは書かれていても、買い手企業として知りたいことは他にもたくさんあります。そこで、知りたいことを資料依頼リストにして売り手に渡します。

 

 売り手としてはそれを確認し、可能な限り情報を提供します。主要な取引先との契約書や労働基準監督署に届け出るべき書類の控えなど、重要な書類が見つからないケースや不備が発見されるケースでは、買い手は対象会社の経営管理体制に不信感を抱くことに繋がります。

 

●ステップ2 現場調査
 店舗ビジネスの場合は、店舗への調査も行われます。在庫を抱えるようなビジネスの場合は、在庫をカウントしたり、どのように管理を行っているのかを確認するために、倉庫等の現場調査が行われることもあります。

 

●ステップ3 インタビュー
 経営者へのインタビューがセッティングされます。どのようなことが質問されるかは後ほど説明します。

 

●ステップ4 調査報告
 専門家が買い手に調査報告書を提出します。買い手はその結果を受けて最終的な判断をします。

 

 ここまでで通常はおおむね1~2カ月となります。売り手が大規模な会社の場合は半年以上かかることもあります。

 

 DDにかかる費用は買収額とリスクの大きさなどによって決まります。経験上、中小企業で買収価格が1億円を切るような案件なら、簡易的なDDとなるケースが多いです。税理士などに決算書を確認してもらい、そこで出てきた意見をもとに判断するといった程度です。その場合の費用は数十万円です。

 

 買収サイズがもう少し大きくなり、中堅の会計事務所等にDDを依頼する場合には、弁護士や社労士など各分野の専門家を入れて総合的な分析が行われるため、数百万円の費用がかかります。

 

 上場企業間のM&Aでは、大手の監査法人や弁護士事務所に依頼されるケースが多く、費用も数千万円になります。