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株式価値を算定する三つの評価アプローチ手法とは?(Part.2)

 Part.1では企業価値算定の概要とその必要性について説明をしました。Part.2ではM&Aに際してどのような準備をしておくとよいのか、企業価値算定の側面から説明します。また、思わぬ高値がつくようなケースとはどのようなケースなのかについて説明をしたいと思います。

 

■売却の事前準備で考慮しておきたいこと

 

 企業価値算定はM&Aのプロの業務であり、精緻に行おうとすれば高度な知識が求められます。売り手企業のオーナー社長が、そのプロと同じような知識を身につける必要はありません。
 ただ、M&Aを実施するにあたって、企業価値算定の大枠を理解したうえで、さまざまな事前準備をしておくことは大切です。

 

 では具体的に、中小企業のオーナーがM&A(売却)を実施するにあたり、どのような準備をしておくべきでしょうか。それは次の4点に集約されます。

 

①株式の理論的な価値の算定手法の理解
 会社ごとに、あるいは事業フェーズ(創業期、成長期、成熟期、衰退期)ごとに、企業価値算定で利用すべき評価アプローチは異なります。どのケースではどんなアプローチが使われるかを学び、買い手候補が自社の株式を評価する方法を理解することが大切です。

 
 
M&Aの価格に明確な答えがあるわけではありません。だからこそ、損をしないためにも、理論的な価値の算定手法を知っておき、それを念頭に交渉や判断をできるようになりましょう。

 

②マーケットバリューの把握
 業種別のトレンド、マーケットにおける自社の価値を正しく把握する必要があります。

 

 同業他社が実際にどのくらいの価格帯(例:利益の○倍)で取り引きされているのか、可能な限り情報を集めてください。中小企業の株式は必ずしも理論的な価値で売買されるわけではないため、同業他社の情報もできるだけ知っておいた方が判断材料になり得ます。

 

③希望売却額を達成するための計画を立案
 希望売却額で購入してもらえる会社を探し続けるより、希望売却額で売却するために何を達成しなければならないか、それを計画し、実現することの方が現実的です

 

「○円で売却したいから、○円くらいの利益が出る会社になろう」というシミュレーションをしたうえで、その利益を出すための経営計画を立案するのです。そして、それに合わせて「強みを磨く」ことも大切です。

 

④希望売却額の算定根拠と競争優位性の明確化
 買い手との価格交渉の材料として、自社の価値を合理的な根拠を持って説明できるようにしましょう。

 

 中小企業のM&Aの世界では、会社の利益や財務状態とは関係なく、思わぬ高値で売買が決まることがあります。例えば自社の強み・競争優位性を高く評価してくれる買い手と出会えれば、圧倒的に有利なかたちで交渉を進められ、高値がつく可能性があります。

 

 そのように有利に交渉を進めるには、自社の競争優位性を明確化し、説明できるようにしておく必要があります。

 

■思わぬ高値がつくこともある「競争優位性」の例

 

 では具体的にどういった競争優位性を持つ企業だと、買い手から高く評価されるのでしょうか。そのケースは五つに分類できます。

 

①取引先
・大手企業との継続的な取引、専属取引契約がある
・直接取引が難しい会社と取引している(一次下請け)

 

②顧客リスト
・絞り込まれた顧客リスト(例えば、経営者、富裕層、40代~60代女性など)を持っている
・リピート顧客が多い
・サブスクリプション型の契約を締結している顧客リストがある
・見込み顧客リストが多い

 

③従業員
・高い専門知識を持つ従業員が在籍する
・有資格者(電気工事士、施工管理技士、薬剤師等)が在籍する
・特殊な技術を持つ従業員(旋盤・プレス加工、設計、カリスマ美容師、有名シェフなど)がいる

 

④業界のシェア
・地域での高いシェア
・ニッチなマーケットでのトップシェア(ニッチトップ企業)

 

⑤特許・技術・許認可
・サービスを提供するうえで必要な特許を持っている
・他社にない技術的な優位性を持っている
・許認可を持っている

 

 こういった競争優位性・強み持っていると、会社の利益や財務状態以上に高く評価してもらえる可能性があります。
 その価値を買い手候補に説明し、十分に理解してもらうことが、M&Aの売り手の重要な仕事です。

 

 Part.3では具体的な企業価値評価手法とその留意点について説明します。