コラム:EXITを考えるべき3つの理由(Part1)
1.はじめに
サラリーマンと違い、オーナー社長には定年がありません。
ですから、何も対策を採らないと、働き続けられる限りいつまでも仕事を続けることになってしまいます。
それが当たり前と思っている経営者が多いと思いますが、そういう方にこそ、私は「EXITを考えてみませんか?」と申し上げたいです。
サラリーマンとオーナー社長を比べてみますと、サラリーマンは65歳で定年を迎え、退職金をもらって年金生活に入る方が多いです。それなりに貯金さえあれば、お金に苦労することもなく、孫と過ごす時間を楽しむこともできると思います。
一方でオーナー社長で後継者へのバトンタッチが上手くいっていない方は、それなりに裕福な生活はできるかもしれませんが、せっかく稼いだお金を使う暇もなく働き続け、気づいたら自由に遊びに行けない歳になってしまうこともあります。働き続けられることは「幸せの1つ」と考えている経営者は多いですが、そのような方でも実は心のどこかでは、「誰かに会社を任せて自由な生活を手に入れたい」と思っているのではないでしょうか?
また、残された家族や親族、従業員や取引先のことも考えてみて下さい。ある程度、大きくなった会社ほど、次の世代にバトンタッチし、会社を存続させることが創業社長の果たすべき最後の大仕事だと私は思います。
本コラムでは、中小企業のオーナー社長向けに、以下の点について解説します。
■ Exit戦略とは何か?
■ 中小企業のオーナー社長がExitを考えるべき3つの理由
■ 税負担に関するシミュレーション
■ ベンチャー企業のExitの種類
2.EXIT戦略とは?
Exit戦略というのは、元々軍事用語で、ベトナム戦争の際にアメリカ軍が現地から撤退する際に使われていたことが由来だと言われており、軍事的もしくは経済的な損害が続く状況から損失・被害を最小限にして撤退する戦略のことを指します。
これがビジネス用語としても使われるようになり、起業家が興した事業を何らかの手段で他者へ渡すことを指す言葉として使われるようになりました。
中小企業の経営者がExitする方法は、主に2種類あります。
■ 会社を売却(バイアウト)する
■ 株式公開(IPO)する
厳密には親族など後継者に社長を継いでもらうことも「起業家が興した事業を何らかの手段で他の人に渡すこと」に該当しますが、株式を譲渡・相続するというプロセスのハードルがあり、一般的にはビジネスの世界では上記2つの方法がExitと呼ばれています。
以前は、経営者が「Exitした」というと、株式公開(IPO)によって多額の資金を手に入れたと受け取られることが多かったと思いますが、最近は創業社長が会社を売却(バイアウト)することによって、Exitするケースも随分と増えております。
著者:末永 貴志(すえなが たかし)
大手監査法人にて会計監査やIPO支援、財務デューディリジェンス等の各種調査業務を経験。その後、親族の経営する機械メーカーに転職し、事業承継に課題を抱える中小企業のマネジメントに従事。現在は、上場会社の法定開示書類の作成支援に特化したコンサルティング会社の代表も勤める傍ら、中小企業の新規事業立ち上げ支援、資金調達支援、IPO支援、M&Aアドバイザリー業務等に従事。