どうすれば、あなたの会社を高く売れるのか?(Part.6)
●アーンアウト条項
これまでも何度か説明してきた「アーンアウト条項」も、手残りを増やすための交渉手段となります。アーンアウト条項を付与して最終契約をすることには、買い手・売り手の双方に以下のメリットがあります。
【買い手のメリット】
・分割払いにでき、当初の買収資金を抑えられる
・買収前には把握できないリスクをある程度は回避できる
・売り手オーナーのモチベーション維持に活用できる
【売り手のメリット】
・より多くの資金を得られる可能性がある
・キャピタルゲイン課税にできる可能性があり、報酬よりも税務負担が少ない
・現在の価値で株式売買が確定するため、将来の事業失敗リスク負担を回避できる
買い手としては、売り手の提示する売却希望価格と目線が合わない時にアーンアウトを使うことで、買収価格を下げられます。
将来、業績目標が達成されたら残りの対価を支払うことになりますが、達成されなかったら払う必要がないので、リスク回避になるのです。
売り手にとってのメリットは、より多くの資金を得られる可能性があること。また、追加で得る対価の受け取り方次第では、税率の低いキャピタルゲイン課税を適用でき、税金を安くできます。
もちろん今後の業績が想定通りにならず、追加の対価をもらえない可能性もありますが、将来のことがどうなるかは誰にもわかりません。
現在の価格で一度キャッシュ化しておき一定の資金を確保しておくことで、精神的な余裕が生まれ、今後2、3年間のモチベーションにもつながると思われます。
ただし注意したいのは、業績目標達成後に得られる追加の対価に対して、必ずしもキャピタルゲイン課税を当てはめられるとは限らないという点です。認められたケースと否認されたケースの両方の判例があり、判断が難しいところです。その点はご留意ください。
このように、会社を高く売るための方法、ノウハウはたくさんあります。業績を上げさえすれば高く売れるというわけではなく、財務面で留意しなければならないポイントもありますし、事前準備をしておくことで買い手は高く評価してくれることもあります。
さらに、契約締結時の交渉術もいくつかあり、知っているかどうかで最終的にオーナーが手にできる資金の額が大きく変わることがあるのです。
どのような属性の相手に会社を譲り渡すか、早めに決まっていれば、彼らが重要視するポイントについて重点的に対策を講じることもできるのです。
ぜひ、ここで紹介した8つのポイントを参考にして、高く売るための準備を進めていただきたいと思います。