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売れる会社、売れない会社のまとめ(Part.1)

 これまでの説明でM&Aの工程やポイントの全体像はご理解頂けたと思います。最後に、売れる会社の共通点と売るためのノウハウについてお伝えします。

 

 これまでにお伝えしたM&A実務の概要と留意点を念頭に置き、いつでも売れる(M&Aができる)状態、さらにはできるだけ高額で売却できるように会社経営をしていくと良いでしょう。

 

 ただ業績を上げるだけでは、M&Aにおいては買い手が好む会社にはなりません。業績を上げると同時に売れる会社の定義に沿った経営を実践していく必要があるのです。本コラムの内容をよく理解して、ぜひ経営戦略に活かしてください。

 

■売れる会社の共通点

 

 M&Aアドバイザーとしていろいろな会社のM&Aを支援しているなかでよく感じるのは、売れる会社と売れない会社には格差があることです。

 

 たくさんの買い手候補に打診してもなかなか決まらない会社もあれば、情報を出した途端、買い手候補がずらっと列をなして並び、すぐに決まるという案件もあります。

 

 では両者の何が違うのでしょうか。私は、売れる会社には以下の三つの条件があると思っています。

 

 

 この三つはどれも当たり前に備えておきたい条件です。どれか一つクリアしていればいいという話ではなくて、三つともある程度の水準を満たしていないと、売れる会社とはいえません。それぞれの条件について詳しく説明していきましょう。

 

■条件1 魅力ある顧客基盤

 

 

 M&Aで売れる会社は必ず魅力ある顧客基盤を持っています。きちんと売上が上がっている、という言い方もできます。これは買い手が売り手に求める重要な要素の一つです。
この「魅力ある顧客基盤」とはどんなものか、もう少し分解して考えてみます。

 

●顧客(特定の属性を持っている層)の囲い込みができている。
 顧客の囲い込みができていることが、魅力ある顧客基盤の重要な要素です。買い手企業の心配事は、買った後に売上が下がってしまうこと。顧客の囲い込みができていて、安定して取り引きをしてくれる顧客がいるという状況は、売上が下がる心配が少ないので買い手にとって安心材料となります。

 

●顧客ネットワークが形成されている。
 例えばサブスクリプションモデルで顧客と契約をしていて、毎月定期課金が入ってくるサービスを持っていると、売上の予測が立ちやすいので安心です。経営権が別会社に移ったからといって急に解約される可能性も低いといえます。

 

●買い手が提供する商品やサービスと相性の良い顧客を持っている。
 化粧品販売している売り手企業があったとして、美意識の高い女性顧客をたくさん抱えていたとします。そういった会社と、美容に役立つサプリメントを売っている買い手企業は非常に相性が良いといえます。
 化粧品会社を買収することで、その会社が持っている顧客基盤(美意識の高い女性)に対して自社の商材を販売できるからです。また商品面でコラボをするなどの相乗効果も狙えます。
 その反対も然りで、売り手が持つ商材が買い手の抱えている顧客基盤とマッチしている場合も相性が良いと評価されます。

 

●買い手が持っていない魅力的な顧客を取引先として持っている。
 ある電気工事会社は職人をたくさん抱えていて、これからどんどん売上を伸ばしていこうとしていました。しかし、なかなか大手の取引先を開拓できないという課題がありました。そんな時に小規模の電気工事会社が売却を検討しているという情報が入ってきました。

 

 その売り手企業は、大手建設会社の一次請けとして仕事をしていました。良い取引先と継続的な取引がある点を買い手は高く評価し、速やかな成約に至りました。

 

 大手企業や官公庁・自治体など、新規開拓が難しく、かつ一度取り引きが始まると継続した受注が狙えるような魅力的な顧客を持っていることは、買い手にとって高くても買いたい案件になり得ます。

 

 続く