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会社売却スキームと税務(Part.2)

■のれんについて理解すべきポイント

 

 のれんについて最低限理解していただきたいポイントを下記の5点にまとめました。

 

①買い手側がどのような会計処理をするか(5年償却がポイント)
 具体的な例でシミュレーションしてみます。

 

 毎年1億円の利益を出している会社を、利益の5年分=5億円で買収したとします。仮に売り手企業の純資産は0円だったとすると、買収額と純資産の差額である5億円の「のれん」が買い手側に発生します。

 

 この場合、買い手の損益計算書にどんな影響が出るでしょうか。

 

 下の図のように、買収後の会社がその後も想定通りの利益を出してくれれば、買い手企業の利益に毎年1億円が上乗せされることになります。

 

 一方で、のれんに対する償却費を年間1億円×5年間計上する必要があります。

 

 

 その結果、1年目から5年目まで、買い手側の損益計算書に与えるインパクトは±0円になります。

 

 そして償却が終わった6年目からは、1億円の利益がそのまま買い手の損益計算書に上乗せされることになります。

 

 会社の買収価格の相場は「利益の3~5年分」と言われることがよくありますが、それは上記のような「のれん」の償却期間が一つの理由です。

 

 つまり、もし利益の6年分の買収価格で買ってしまうと、毎年計上する減価償却費が、毎年計上される利益を上回ってしまい、赤字が発生する可能性があるということ。これを避けたいために、「利益の3~5年分」の買収価格が設定されるわけです。

 

②税務上の「のれん」は、発生要件が決まっており、償却(減額)ルールが定められている。

 

 税務上の「のれん(資産調整勘定)」が発生するかどうかは、適格要件に当てはまるかどうかで変わってきます。詳しくは次にご紹介する「会社分割の活用事例」のコラムで説明します。

 

③税務上の「のれん」償却には、節税効果がある。

 買い手にとってのれんの償却費は、実際にはキャッシュが出ていかないのに、費用として計上される項目です。したがって償却費の分だけ節税ができます。

 

 例えばのれんが5億円だったら、法人税率30%として、トータル1.5億円ほどの節税効果があります。これは税務上とても大きなインパクトといえます。

 

④株式譲渡の場合、連結上でしか「のれん」は計上されず、会計基準によって処理が異なる。

 事業譲渡のスキームで売却した場合、買い手企業には必ずのれんが生じます。

 

 一方、株式譲渡の場合、買い手企業が連結財務諸表を作っているケースでのみ連結上の「のれん」を認識します。上場企業グループが買い手となった際には、この「のれん」の計上額が投資家向けに開示されることとなるため、買い手企業の経営者は譲り受ける企業の純資産と買収額の差額を気にします。

 

 ただしこの場合の「のれん」は、連結財務諸表に計上されるだけで、個別財務諸表には計上されないため、節税効果は生じません。

 

 続く