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M&Aの実務でよく使われる評価方法(Part.1)

■株式価値の主な評価方法

 

 M&Aの実務で使われる評価方法について解説します。買い手が売り手をどのような方法で評価をしているのか、大枠をつかんでください。

 

 株式価値の評価アプローチには3種類あることはすでに説明しましたが、その内容と代表的な評価方法は以下の表の通り。これらのうち、中小企業のM&Aにおいて一般的によく使われる三つの手法(時価純資産法、EBITDA法、DCF法)に絞って解説していきます。

 

 

■時価純資産法とは?

 

 時価純資産法とは、貸借対照表の資産・負債を時価で評価し直して純資産額を算出し、1株当たりの時価純資産額を割り出して株主価値とする方法です。

 

 例えば、資産のなかに土地があり、含み益が出ているのであれば、それを時価に直して把握します。

 

 すべての資産・負債を時価評価するのは実務的に困難なことから、土地や有価証券などの主要資産の含み損益のみを時価評価することが多いので、「修正簿価純資産法」と呼ぶこともあります。

 

 土地・建物以外にも、さまざまな項目を調整して時価を算定します。M&Aの実務における主な調整項目は以下の通りです。

 

 

●資産の調整項目
 資産の代表的な調整項目としては、回収が見込めない売掛金、あるいは貸付金があります。それらの回収可能性を判断して、もし回収不能と判断される場合には債権額を0円に修正します。また、販売見込みのない在庫があったら、それも評価損を計上し販売可能額へ修正します。

 

 土地・建物については、いま売却した場合はいくらになるのか、時価で評価します。土地・建物の時価を簡便的に算出するには、「固定資産税評価額÷0.7」で計算する方法が一般的です。

 

 生命保険や中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)などを解約した場合に戻ってくる解約返戻金の額も資産として計上します。

 

●負債の調整項目
 負債の調整項目の代表は、未払残業代などの未払給与です。将来的に支払いが発生する可能性があるので、負債として計上します。

 

 また、退職金規程があり、退職金を支払う義務がある場合は、退職給付債務を負債に計上する必要があります。なお中小企業退職金共済制度(中退共)などに納付した分については、すでに支払いを終え、将来、退職金支給時の会社負担は生じないわけですから、債務に計上する必要はありません。

 

 リース契約については、解約できるものとできないものがあり、解約不能の契約分については将来的な支払いが必ず発生するため、未払債務として計上する必要があります。

 

 偶発債務とは、現時点においては債務となっていないものの、将来一定の条件が揃った場合に債務となる可能性があるもののことです。

 

 例えば、元従業員や取引先の間で係争中の場合には、敗訴した場合に損害賠償義務を負う可能性があることから賠償負担見込額を負債として計上します。

 

また、所有する土地・建物に土壌汚染やアスベストなどが発見されるリスクがある場合には、その解決費用の見込額を負債として計上します。

 

 続く