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M&A実務の流れ(前半)

 今回はM&Aが一般的にはどういう流れで進められていくのか、実務の流れを説明します。はじめて会社の売却に臨む経営者にとって、M&Aのプロセスが分からない事は不安要素だと思います。

 

 それぞれのフェーズでのポイントを押さえておけば、主導権を持ってM&Aの交渉を進める事が出来ますので理解を深めて頂ければと思います。分からない事や不安に思う事はM&Aの事業者に相談すべきですし、場合によってはセカンドオピニオンを求められるだけの最低限の知識を備えておきたいところです。

 

 また、M&Aの実務に慣れている買手企業と対等に交渉を進めるためにも、M&Aのプロセスを把握しておくことが大切になります。

 

 

●準備フェーズ

 売り手側の立場で流れを説明していきましょう。まずM&Aによる売却をする場合、通常はM&Aを支援する専門会社(M&A仲介業者、ファイナンシャル・アドバイザー、金融機関、会計事務所や弁護士事務所など)に相談をします。
 
 

 会社の重要な財務情報や従業員名簿などを開示したうえで相談することになるので、相談前に秘密保持契約を締結し、そのうえでアドバイザリー契約を結びます。

 

ロングリスト・ノンネームシート

 M&A専門会社のアドバイザーは主に3期分の決算書を分析し、売却にあたって何がリスクになるのかを分析し、売り手の売却希望額を聞き、買い手先候補のリストを作成します。このリストを「ロングリスト」と呼びます。

 

 併せて「ノンネームシート」を作成します。ノンネームシートとは、会社が特定されるような具体的な情報は伏せつつ、M&A案件の概要(事業内容や地域、売上規模)情報を1枚にまとめた資料です。

 

 このノンネームシートを、ロングリストに記載した会社に対して配っていきます。
 興味を持つ買い手候補企業からリアクションがあったら、買い手候補と秘密保持契約を交わしたうえで、買い手候補の社名を売り手企業に伝えます。会社の売却は経営者にとっては知られたくない情報と言えるでしょう。よって、自社が売却を検討している事を広く知れ渡る事について心配される方もいらっしゃると思います。

 

 売り手企業は買い手候補先を確認したうえで、詳細情報を開示するか判断します。売り手企業の許可を得ずに、アドバイザーが買い手企業に情報を開示することはありません。
 このようにM&Aのプロセスは手順を踏んで進めますので、情報が広く知れ渡る事はありませんが、最近はM&Aのプラットフォームが盛んに使われている事や、モラルに欠けたM&A事業者がいる事も事実ですので、M&A事業者の選定も大切になってきます。

 

IM(案件概要書)

 売り手の了承が得られたら、さらに具体的な情報が記載された「IM(案件概要書)」を買い手に開示します。 IMは案件概要・企業概要・直近の業績・ビジネスモデル・強みや弱み・特徴などM&Aを検討するために必要な情報をまとめた資料になります。

 

 買い手がIMの説明を受けた後、検討を続けるかどうかを判断をするために売り手に対して質問をしてきます。複数の買い手候補がいる場合にたくさんの質問に回答するのは売り手にとっては負担を感じる事になるでしょう。また、交渉が進むかどうか分からない買い手に対して回答する事はストレスにもなります。
 この点についてはM&Aの事業者がサポートもしますが、詳細な質問については意向表明後に対応するというように線引きをすることでコントロールします。

 

 そして買い手がIMの内容を検討した結果、さらに話を進めたいという意向が出てきたら、アドバイザーが間に立ってトップ面談をセッティングします。

 

セルサイドDD

 ここまで準備フェーズについて一通り説明してきました。ここでセルサイドDD(デューデリジェンス)についても簡単に触れたいと思います。DD(デューデリジェンス)はM&Aの交渉の後半で実施する、買い手が売り手の精査をする事ですが、セルサイドDDは売り手が自ら簡易なDDを実施しM&Aの事前準備をする事を言います。

 

 何故セルサイドDDをするのかというと、誤解を恐れず表現するなら「より高く売るため」です。セルサイドDDを通して主にビジネス・財務・法務における自社の理解を深める事で自社の正しい情報を買い手に伝える事が出来ます。また、買い手から求められる資料を速やかに提出できる体制になっている事は買い手に安心感を与える材料になります。

 

 DDは売り手にとって大きな負担になりますが、セルサイドDDで自社の把握をし、事前に準備をすることで、負担を軽減すことにもつながります。

 

 後半につづく